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自閉症児の美術教育
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Cheng Ting Chen

Art Education for Autistic Children

自閉症児制作パタンと公式画の形成

    自閉症児の絵は、足し算法で、少しずつ過去に経験した絵を積み重ねることによって発達する。その過程は以下で説明する。

1.       スキーマの形成:スキーマというのは、ある対象について、過去の個人的あるいは社会的経験に基づいて体制化された知識構造である。個体が環境に適応するには、自身の心身発達状態、過去の学習経験、知識や認知(例:模倣や自分で想像したイメージ)が必要となる。

   2.        基本モデルの形成:スキーマによって描かれた絵の表現は基本モデルである。  3.  最初の絵画イメージの形成:人はスキーマに基づき、それをより複雑に発展させ、さらに多くの基本モデルを追加していくことで、絵の内容を豊にする。様々な簡単で安定的なスキーマを組み合わせて最初の絵画イメージをつくりだす。

  自閉症児の絵は、一つ一つの基本モデルを覚えそれを積み重ね形成させることで発達はするが、彼らはその基本モデルや最初の絵画イメージに頼りすぎる傾向が強い。そのイメージに基づき様々な可能性を試せばよいのだが、そのようなことはせずに、彼らは明確な秩序や手順を頼りに混沌とした世界を認識することで、安心感を得るのだ。しかし彼らは、昔模写した絵や自分で想像した絵を何度も繰り返し複製する時に、少しずつ新しいアイデアや要素を加えるため、変化を嫌う姿勢でありながらも、時間をかけ自分なりのスタイルを次第に形成してゆく。

   4.  公式画の形成:自分が絵を描くときの感情や興味は時には絵の内容と直接関係がないこともあり、絵を描く順序だけを楽しむようになる。絵を描く行為は、私達が字を練習することと同じようになってしまう。そうなると、何度も同じ手順を繰り返し、ただ基本モデルを描いて済ませるようになるのだ。

特に授業中、新しい絵の課題や内容について、手順がはっきりわからない、或いは慣れていない絵を描かせようとすると、テーマを無視し、基本モデル或いは最初の絵画イメージを複製するだけになり、公式画となる。教師は彼らに注意し、何枚もの新しい画用紙を与え、描き直させることで、彼らに理解させ、ついには課題内容を理解し描き始めるように導くことができる。

このような公式画を描くときの特徴としては以下のようである。

    線で表現する。

    細部の装飾がない。

    字を書くように速いスピードで描く。

    記憶を頼りに描く。「記銘→保持→再生→再確認」の順

    無感情で表現する。

    物語性がなく、それ以上の発展性もない。

    バラバラでまとまりがない

    いいかげんにあしらい、適当にごまかす。ルーズ。根気がない・・・11、12才の子供であっても4、5才の子供のように我慢できない様子。 教育者は、彼らにさまざまな問題を解決させ、新しい基本モデルを創造させるきっかけを与える必要があり、彼らが古いスキーマや、基本モデル、発展性のないものに夢中になる行為から抜けだす手助けをする必要がある。限られた範囲の中だけで活動したり、いつまでも繰り返しの世界にとどまったりする生活から、離れさせるように努力するべきである。

順序性からの創造と制限

1.順序性からの創造 秩序によってものを配列するとき、その配列的要素間の関係は一定である。順序性をもつこともあれば、はっきりとした順序性を持たないこともある。美術創作には、そのテーマや内容に特別な考え方を表す必要があると考える。独創性が生まれる可能性としては、大きく2つの方面にわかれる。

 

一つは、限られた範囲の中で問題を解決する方法や見方を提示することである。それ故画家達は、どのように2次元の平面上に3次元空間を表現できるのか、様々な可能性を求め、どう表現するのかを長い間模索しつづけてきた。

もう一つは、論理だけに拘らず、新しい可能性を作り出すことである。例えばイタリアの作家フォンタナ( Lucio Fontana, 18991968は刀でカンバスを1つの線で分け、実際の三次元空間を表すことによって、その問題を解決するという一つの方法を提示した。

秩序をテーマとすると、その要素が順序性のある概念を持つ手助けとなるので、正・反順序のイメージ関係をも把握できるようになる。自閉症児は順序規則に固執するため、そのルールは必然的なものであると考える。特定の順序性がない場合は、自ら新しい順序規則を作り出し、それを守ろうとする。 以前私は、15才の高機能自閉症児Aくんに、彼と妹の幼い頃の写真をみせ、それを手本として絵を描くように勧めた。ところが彼はそれに対し、長い時間我を張って描きたくないという主張を続けた。彼にとっては、昔と今では時間的に大きなずれがあるという感覚があり、今現在、昔の絵を描くということは時間の規則を破ることであり、それは彼に許せないことなのである。昔の自分を描いたりしたら、人に笑われると思いこんでいた。私はそれでも、何度もその絵を描くことを勧め、なんとか彼に描かせることができた。しかし、彼は幼い頃の自分と妹を点線で描きだし、一方、背景や周りの物については実線で描いた。実線は現在のものであることを表し、点線の部分は現在には存在していないということを表現したものであった。彼は、彼特有の順序性を持った論理に従って、創造力を発揮したのだ。

問題を解決することに対し、一般人は特に自己制限することなく、単純に様々な可能性の中で問題を解決しようとする。しかし自閉症児はというと、自己制限をし、自ら作り上げた規則に従って解決しようとするため、健常児の見方や作品とは異なる新しい考え方によって、表現しようとする。このような見方をヒントに、彼らの拘りの特質をもう一度見直し、芸術創作について、より深く考える機会を提供できるのではないだろうか。

 

 

2.際限なく制限に縛られる絵の表現

自閉症児は中国語でよく「星兒」星の子と呼ばれる。一般的な理解を超えた宇宙の子供というような意味であり、自閉症児を間接的に表現した言葉である(差別的な意味はない)。なぜそう呼ばれるのだろうか?

他の精神障害児(例えば多動症や鬱病患者など)に、心理的な障害があったとしても、基本的には一般の人の思考論理と同じである。しかし自閉症の場合は、一般人やほかの精神障害児とは異なったシステムによって思考論理を立てるのだ。自閉症児が人の顔を観察するときの脳の活動は、健常児とは異なる。この異常は、彼らの環境と社会の相互作用に対する興味を妨害する。自分の注意力を注ぐ範囲を狭めるために、単一の運動(例えば、椅子の揺れ動く様子など)に限りなく精神を集中させる。そして、一般人にとって計算の難しい数字、一目見ただけでは予想できないような数字を、まるで目の前に見えているか、直接感じているかのように、直感的に言い当てたりもする[1]



[1]私の生徒のAくんは、たくさん束ねてある爪楊枝の本数や、超高層ビルの建物の階数、暗証番号などを一目で正しく言い当てる。十歳のBくんは人物すら描くことはできないのに、パズルをやらせると、必ず最初に絵の中心のピースを1枚探し出し、次々にその周りのピースを順序よくはめて完成させるのだ。

自閉症児は視覚芸術の分野に才能を持つものが多いと言えるが、彼らのこのような性格的特徴が原因で、絵を描くことについて次から次へと制限を作り出してしまう。

自閉症児は、彼らの模倣、執着行為等の本能によって様々な画像を発展させ、2つの映像を1つの画面に映し出す。そして、彼らの中には成長と制限が共存する。どんなに技法やアイデアが抜群であったとしても、彼らの目の前にはつぎつぎと制限が現れる。自閉症の執着行為は、生きる為に必要不可欠な物になっていて、全ての場合において「変化への抵抗」を伴う

一般の人は作品を創造する時、彼らのように規則的な制限を設けず、無意識に多くの可能性や自由感をもって作品を作る。しかし自閉症児の場合は、いつも新しい規則を捜したり、自らその規則(例:、絵を描くとき、使うクレヨンは折れないといなど、途中で折れるとパニックを起こし、絵をかきすすめることができない)を作ったりすることで、範囲を狭め多くのルールに縛られて作品を作る。このように、彼らは創作過程において多くの困難に直面する。それを乗り越えていく過程は、一般の人には、ときに意外性をもつユーモアとして映り、彼らの絵は新しい意味をもち、創造的効果をもたらすのである。

彼らは問題を解決した経験に基づいて、新しい規則を設けるため、次の問題に取り組むときに、過去の問題を解決した時ほど時間をかけずにそれを解決することができる。それが自信となり能力を上げていくことにつながる。

自閉症児の可能性は、広い範囲の中で多くの可能性を持った健常児よりも、範囲が狭いのだが、様々な問題に基づいて作る小さな可能性の数は一般のそれよりも多いといえる。このような点から、美術教師はいかに彼らの制限やルールを意識し、彼ら自らが問題を解決し、様々な創意を生み出すように導くかが、重要な課題だと考える。