普遍的となったシンボルマークは、人々に安心感を与える。なぜなら、他の人から特に説明されなくても、ある程度の理解を得られるからだ。(例:12星座表や国旗など。) これに反して、私人的なシンボルマークに対しては、自分がおろそかにされたような挫折感を感じる。
自閉症児を慣れた環境の中で安心させることは大変重要となる。シンボルマークは彼らに安心感を与える種類に属する物である。それ故、彼らは普通の生活や日頃描いた絵に、様々なマークを識別して並べたり、それに関連して周辺の設備を作ったりすることに心を奪われ、その為に多くの時間を費やす。
シンボルマークは自閉症児が絵の論理を理解するに当たり、重要な手がかりや入り口になると考えられる。シンボルマークの複製は、現代の大量消費生活を暗示させ、大量生産や一般大衆に訴える文字や言葉を含むことにつながる。自閉症児の複製の繰り返しは、その後創作される作品に多くの関連性や影響を及ぼし、次第に自分特有の見方を表す場合も多く見られる。
3.実生活の可能性による創造力
自閉症児は想像の世界に入ることがなかなかできない。本物に近いことではなく想像力を発達させるごっこ遊びは彼らにとって難しい。自閉症児は絵の題目はよく日常生活の細かいところや真実みに拘る。美術教育において絵の内容を示す際に常に直面する困難のひとつは自閉症児の創造力は常に現実生活の上で存在する可能性があるかどうかに拘る。例えば教師がもし未来に空飛ぶ車ができたとしたらというテーマを与えると、「それは不可能なことだ。」と反論し、興味のない様子を示す。
それとは反対に、彼らは絵の内容に私達にとってはなおざりにされがちな日常的なテーマを取り上げることを好む。例えば、学校のクラスメートが先生から叱られる時などにめいめいの生徒が手を棒でたたかれる様子や、ラーメン、思春期に自分に生えたひげなどを題材にし、長時間夢中になって描くことなどが楽しくてたまらないといった様子なのだ。
十二歳のB君のお母さんはBくんについて以下のように述べている
➀ 兄弟は、兄一人。本来言葉を話さない。ミニカーや恐竜などの玩具での一人遊び。長庚医院において、動作の模倣、模倣訓練を受ける。
➁ 5才の時、すすんで図形を描いたり、円を描いたりするが、(いつも――するが、)持続時間は短く、自分で一つの作品を作り上げることができない。色の学習が早く、藍色ばかりを好む。
➂車に興味があり、ものの外観の判別には特に能力があり、車のエンブレムなど特に詳しい。そのため、彼を教えはじめた時には、様々な種類の自動車メーカーのものを描かせ、その形状や色の見分け方を教えた。駐車場に興味を持ち始め、家にあるCDやDVD、積み木、紙箱、本を使って様々なタイプの駐車場を作り、自分でメーカー名をつけた。
➃
郵便車両や汽車を描くことを好み、電車の百科辞典などを大量に閲覧したり、様々な電車の正面から見た絵を詳しく調べ、描いたり、その形に切り抜いて組み立てたりする。
➄ コンピューターゲームに夢中になり、その登場人物などを描きはじめる。
➅ 自宅付近や、学校や銀行などの地図を描くことを好む。電車の路線図なども描く。
➆ バスを描くことを好み、中壢客運(台湾のバス会社名、中壢は地名)を偏って好む。新旧のバスの外観を描いたり、運転手の氏名を暗記したり、自分の部屋にバスの模型を飾ったりする。運転手を座らせ、集金用の箱、改札機、定期、路線変更標識、運転手番号、氏名、車内広告、駅名入り路線図など、すべて自分で製作する。
➇ 人の名前の漢字を変えて遊ぶ、同級生の名前など。
➈ 自分で、バス会社名を変えて絵に描く。
➉
テレビで見た下着メーカーのCMが好きになり、最近では、下着のみを身につけた女性を描く。
ところが現実性といっても、自閉症児の視点は常に一定で自らの快感原則に従っているようにみえる。しかもその視点は自分を中心として360度均等に、平等に先入観なく取り入れているように見える。自分の好きなことが世界の中心となり、他の物はその付属品に過ぎない。
11才のCさんは学校で交通安全というテーマで絵を描くようにという宿題を出されたとき、自分のお気に入りの犬を連れて道を渡り地下道に入ろうとしているという内容の絵を描いた。通常、標識や歩行者用の信号の赤や青の表示のところには人の姿が描かれているのであるが、彼女はそれをすべて犬にかきかえ、さらに「人行地下道」(註:日本語で「人用地下道」)という文字を「狗行地下道」(註:日本語で「犬用地下道」)と書き換えていた。